メルマガのコラムからの転載です。


 

今日はブッダ・プールニマなので、禅の紹介を少ししようと思います。

あろ時、禅の始祖である達磨大師が4人の弟子にその自分の得た境地を問うたことがありました。
道育、道副、尼総持が各々自分の境地を述べたが、
慧可が問われたとき、ただ静かに立っていました。
達磨は「汝は我が髄を得たり」と言って、彼に印加を授け、第二祖にしました。
沈黙の中で、語り得ぬものを語ったとされます。

禅は偶像を否定し、言葉での理解を否定し、自分の心の仏・真実・悟りを尊びます。

禅に「仏に会ったら仏を殺せ」、「師に会ったら、師を殺せ」という言葉があります。
これは何も本当に殺せということではなく、真実の自分以外のものはまやかしだから、それらに囚われないようにとの意味があります。

従って、禅では仏像も経典も尊びますが、それは単なる真理の比喩としての位置づけです。

こうした禅の思想を端的にあらわしている四つの句があります。

不立文字 (真実は言葉では言い表せない)
教外別伝 (真実は言葉ではなく、別に伝えるものである)
直指人心 (自己の心の本性を見極めれば)
見性成仏 (それが仏性であり、仏そのものに相違ならない)

(※読みは、「ふりゅうもんじ・きょうげべつでん・じきしにんしん・けんしょうじょうぶつ」)

だから禅者の中には、経典や仏像を焼いてしまう人たちもいます。
自分の中に仏・真実を見出したものは、外の夢の世界の仏は必要ないのでしょう

仏教では、生きるものは皆、仏性を持っていると説きます。真の自分は仏なのです。
でも、なぜか自分を忘れ、、自分を探す旅に出ています。
そして、真の自分を思い出すことを「悟り」と言います。

 

禅に十牛図という、悟りにいたる道筋を表した図があります。

十牛図は我々の真の自己を牛に譬えて、その牛を求め、捕まえ、馴らし、遂に求める自分と牛とが全く一つとなり、空へと帰す。そして再び人々の中に戻りそれを伝える過程を画で示したものです。

それをデフォルメした十猪図がありますので紹介します。(『ブッタとシッタカブッタ』より)

 

十猪図

1.
1-1
自分は一度も自分の中から失われた事がないのに
どうして自分を探す必要があるのかなぁ
自分をどっかよそへ置き忘れてきたなんてことがあるのかなぁ
本当の自分と今の自分って別々のものなのかなぁ
別々のような気もするし 一緒のような気もする
ああ自分の足跡すらみつからないよぉ

.

2.
2-1

本当の自分は何かの陰に隠れているのかなぁ
自分を探す旅をして気がつく事は
苦しいとか楽しいという草や
いいとか悪いとかいう草や
損とか得とかいう草や
欲とか恐怖といういろんな草が
道や足跡を隠して
ボクを迷わせているんだなってこと
そんな草をかき分けて進むのって
とってもくたびれるけど
あっ 足跡がみえたぞ

.

3.
3-1

美しい鳥の声が聞こえる
太陽は暖かく風はやさしい
ボクはまわりにおこっていることのすべてに
敏感になった
この世の全ては
ボクの心でつくられていることを知った
心すら心でつくられていることを知った
そして ただただ この空の下に立つとき
ボクはボクを見つける

.

4.
4-1

見つけられた彼は
ひとすじ縄では取り押さえることはできない
自分の影のように彼は
追っても追っても 逃げる逃げる
頑固な彼を 大変な苦闘の末に取り押さえる
苦しんで疲れて立ち止まったら
彼は目の前におとなしくしていた
目覚めという鞭(ムチ)で 彼はおとなしくなる
あばれさせていたのは 自分だったのかもしれない

.

5.
5-1

鞭と手綱をもっていないと
彼はすぐにゴミやホコリや泥んこの道に入って隠れてしまう
飼いならしていくと 彼は自然におとなしくなる
そうやってなれてきたら 鞭も手綱ももういらない
彼は後からついてくる

.

6.
6-1

心の中の奮闘は終わった
損だの得だの
いいだの悪いだの
好きだの嫌いだの
そんな妄想も消えた
彼の上にまたがって
彼があるくままにまかせても大丈夫
ゆっくりゆったりゆらりゆらり
家に帰っていく
いい気持ちで 笛をふいて家に帰っていく
無心の彼と無心のボク

.

7.
7-1

彼をつかまえたと思っているうちは まだまだ病気
彼をつかまえたボクと彼とは2つではなくて1つのもの
たとえ話で彼がいるだけ
雲が晴れたら月は出てくる
もう彼に用はない 鞭も手綱もいらない
彼の思うままにさせておけばいい
そして彼のことなんか忘れてしまう
嬉しいこともいいし 悲しいこともいい
ボクはボクのもとへ帰ってきた
さ ゆっくり休もう

.

8.
8-1

わかったとかわからないとかじゃない
気がついたとか気がつかないとかじゃない
悟ったとか悟らないとかじゃない
またその(じゃない)とかでもない
右とか左とか上とか下とかじゃない
どちらでもあるし、どちらでもない
2つじゃない
ありがたいだの ありがたくないだの
ためになるだの ためにならないだの
いいだの悪いだの 嬉しいだの悲しいだの
そんな名前の雪が降っても  みんな溶けてしまう

.

9.
9-1

本来の自分に還るために
なんて苦労をいっぱいしてきたんだろう
草をかき分け猪を探して
やっと飼いならして家に帰ってきたけど
すっかり猪の事も忘れて 元に戻ってきただけだ

結局はありのまま まんまでいいんだ
水は穏やかに流れている 花は紅く咲いている
はじめから世界はそのままで真実
はじめから世界は何も隠していないんだ

.

10.
10-1

聖者賢者の後を追うこともない
心の旅を一周したことなんか
誰も気づかないだろう

ボクはみんなと 飲んだり笑ったり
それでみんな安心してしまう

超能力や奇跡をおこす力を使うわけじゃない
ただ歌ったり 笑ったりするだけで
みんな みんな 安心してしまう

 

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