ガンジーには4人の子供がいましたが、二男のマニラールの話です。

「ガンディーを継いで」(塩田純著) より引用です


ガンジーの長男ハリラールは偉大な父に反抗し、酒に溺れ、イスラム教に改宗し、父の教えを破ることを生きがいとするような生活だった。
対照的に次男のマニラールはそんな兄を補うかのようにガンジーに生涯従順に従った。

父マニラールについて長女のシーターはこう語っている。

「父は子供達が過ちを犯すと、自分にも罰を与えました。
小さな嘘でも、その日は断食し、翌日まで及んだことがありました。7日間断食したことがあります。
父はよく言ったものです。

『子供達を正直にできなければ、私に悪いところがあるのだから、自分を罰する。』

父も母も断食したことがありました。
私たち子どもにとっては辛い体験です。
しかし、この体験から同じ間違いはしなくなりました。」

長男アルンも父マリラールが子どもの過ちのため自らを罰する姿を回想している。

ある日、家族で約30キロ離れたダーバン市街にでかけた。
アルンは16歳で自動車免許を取ったばかりだったので、運転手を申し出た。
アリラールは自動屋の点検、オイルの交換などするよう言いつけて、夕方この交差点で待っているから自動車で一緒に帰ろうと約束して別れた。
アルンは車を整備工場に預けてすぐに映画館に入った。ジョン・ウェイン主演の二本立てだった。
そしてアルンは夢中になって見入り、映画館を出たときには5時30分になっていた。
あわてて整備工場に行って約束の交差点に自動車を走らせた。すでに6時を回っていた。

マニラールはわが子に事故でも起きたのではと心配しながら道路を行きつ戻りつしていた。

「どうして遅れたんだね」

「自動車の整備が遅れたんで、待っていたんだ。」

すると父は厳しい表情で言った。

「おまえに真実を言う勇気がなかったのは、私の育て方に問題がある。おまえは私に嘘をついている。
私がおまえに対して、どんな点で育て方を間違っていたか考えるために、私は家まで歩いて帰ることにする。」

夕方6時過ぎからマニラールは家のあるフェニックス農場まで、30キロの道を歩き出した。
アルンは自動車でのろのろと父の後ろをついて行った。
5時間半の道のりはアルンにとっても辛く長かった。

「私がついた愚かな嘘のために、父が悲嘆と苦痛にさいなまれながら歩く姿を見ました。
そのとき、私は今後一切嘘はつかないと心に決めました。
愚かな嘘のために両親にこのような苦しみを与えてはいけないと。

子どもが間違ったことをした場合、ほとんどの親は大声で怒鳴ったり、外出を禁じたり、罵声をあびせたりします。
しかし、結果として残るのは苦痛だけです。
子どもたちは『自分たちが見つかったのが悪かった。今度は絶対に見つからないようにしよう』と思うのです。
そして何度も同じ過ちを繰り返すのです。

しかし、私の父は自分自身に試練を与えていました。
私は5時間半も父が苦しみぬく姿を目のたたりにして、それが私の戒めとなったのです。」

 

-「ガンディーを継いで」塩田純 著 より

 

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